学びの秋に身につけたい、沖縄の「お金の知識」
最終更新日:投稿日:金融・経済金融リテラシーと投資教育のはじめの一歩

「学びの秋」に、お金の知識をアップデートする
はじめに
読書や資格の勉強、習いごとなど、何か新しいことを学び始めるのにぴったりの季節が秋です。せっかくの「学びの秋」に、一度「お金の知識」にも目を向けてみませんか。新NISAの開始以降、投資への関心は大きく高まりましたが、その一方で、基本的な知識が追いつかないまま投資を始める人や、SNSをきっかけに投資詐欺の被害に遭う人も増えています。今回のコラムでは、2026年3月に公表された最新の「金融リテラシー調査(2025年)」の結果をもとに、沖縄の現状と、投資を始める前に知っておきたい基本の考え方、そして身を守るための視点を整理します。
金融リテラシーとは「お金の知識と判断力」
金融リテラシーとは、一言でいえば「お金に関する知識と、それを使って自分で判断する力」のことです。毎月の家計管理や、将来に向けた生活設計、保険やローンの選び方、資産形成、そして金融トラブルに巻き込まれないための行動まで、その範囲は意外に広く、特別に投資をしている人だけに必要な力ではありません。金融経済教育推進機構(J-FLEC)が実施する「金融リテラシー調査」は、こうした力を測るために、全国の18歳から79歳までの約3万人を対象に3年ごとに行われている大規模な調査で、2025年の結果が2026年3月に公表されました。
全国の正答率は53.8%、教育を受けた人はまだ少数
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最新の調査では、金融リテラシーを問う正誤問題25問の全国の正答率は53.8%で、前回(2022年)の55.7%から1.9ポイント低下し、これまでで最も低い水準となりました。一方で、「金融経済教育を受けた」と認識している人の割合は全国で8.7%と、前回から1.6ポイント増えたものの、まだ1割に満たない水準です。注目したいのは、教育を受けた人の正答率が前回より上昇した半面、受けていない人は低下しているという点で、学ぶ機会の有無が、知識の差に直結していることがうかがえます。新NISAなどをきっかけに投資経験者が増える中で、知識の裏付けが追いついていない現状が、調査結果から浮かび上がっています。
年代別に見ると、若い世代ほど正答率が低い傾向が続いており、18〜29歳の層は他の世代より低い水準です。2019年と比べた低下幅は、30代や40代など現役世代でも大きいと分析されています。また、日本では「自分の金融知識に自信がある」と答える人が米国に比べて大幅に少ないことも指摘されており、知識への自信のなさが、投資や資産形成への一歩をためらわせる一因になっているとも考えられます。逆にいえば、基本から少しずつ学ぶことで、自信を持って判断できる人を増やしていける余地が大きい分野だといえるでしょう。
沖縄の金融リテラシー、最新調査が示す変化
正答率は全国平均を下回るも、最下位は脱却
沖縄県の金融リテラシーについては、これまで厳しい結果が続いてきました。2019年と2022年の調査では、都道府県別の正答率が2回連続で47都道府県中の最下位となり、「お金の借り入れや消費者ローンの利用が多く、支払いが遅れがち」「金融トラブルの経験者の割合が高い」「緊急時の備えが不十分」といった傾向が指摘されてきました。2025年の調査でも、沖縄県の正答率は約49%と全国平均の53.8%を下回る水準にとどまっていますが、地元紙の報道によれば、長く続いた最下位からは脱却しました。数字としてはまだ改善の余地が大きいものの、変化の兆しは確かに見え始めています。
「金融教育を受けた」という実感は全国3位に浮上
さらに注目されるのが、「金融経済教育を受けたと認識している人」の割合です。沖縄県は2025年の調査で10.4%と、前回から3.6ポイント上昇し、前回の20位から全国3位へと大きく順位を上げました。背景には、県内の金融機関が学校や地域で行っている出前授業やセミナーなど、金融リテラシー向上の取り組みが広がってきたことがあると見られています。「学ぶ機会が増えた」という実感は、これから正答率や実際の行動の改善につながっていく可能性を持つ、前向きな変化といえるでしょう。
数字の裏側にある課題は「緊急時の備え」
ただし、順位の変化だけに目を向けるのは禁物です。過去の調査では、正答率の高い都道府県ほど、病気や失業などの緊急時に備えた資金を確保している人の割合が高いという傾向が示されています。投資の知識以前に、まずは「いざというときの生活防衛資金を用意できているか」という足元の家計の土台が、金融リテラシーの大切な出発点になります。投資に関心を持つことは良いことですが、生活に必要な資金や、近い将来に使う予定のお金まで投資に回してしまうことのないよう、家計全体のバランスを見直すことが大切です。
投資を始める前に知っておきたい基本の考え方
正答率が伸びにくい「複利」「分散」「リスクとリターン」
J-FLECの調査では、「複利」「分散投資」「保険」といった基本的な分野の正誤問題の正答率が、4〜5割程度にとどまっていたと報告されています。複利とは、運用で得た利益を元本に組み入れることで、利益がさらに利益を生む仕組みのことで、時間をかけるほど効果が大きくなる性質があります。たとえば、あくまで計算上の仮定ですが、100万円を年2%の複利で5年間運用できたとすると、単純に利息を足した110万円ではなく、約110万4千円になります。差はわずかに見えても、期間が長くなるほど開いていくのが複利の特徴です。ただし、これは将来の運用成果を約束する数字ではなく、実際の運用では価格変動により増減する点に注意が必要です。分散投資とは、資産を一つに集中させず、値動きの異なる複数の対象に振り分けることで、特定の資産が大きく値下がりしたときの影響を和らげようとする考え方です。いずれも「長期・積立・分散」といった基本方針を支える土台となる知識ですが、制度や商品の名前を覚えるより前に、まずこうした仕組みの意味を理解しておくことが、判断を誤らないための第一歩になります。
「元本保証ではない」ことを理解する
投資について最も大切な前提は、あらゆる金融商品には、期待できる収益(リターン)と、損をする可能性(リスク)が表裏一体で存在するということです。株式や投資信託などは、価格変動によって元本を割り込む可能性がありますし、貸付型のクラウドファンディング(ソーシャルレンディング)のような仕組みでも、貸付先の業況によっては、当初想定していた分配が受けられない可能性があります。「高い収益が期待できるものほど、リスクも大きい」という原則は、どの商品にも共通しています。仕組みやリスクを自分の言葉で説明できる状態になってから検討する、という姿勢が、長く資産形成を続けるうえでの土台になります。
投資詐欺から身を守る――金融リテラシーの実践編
SNS型投資詐欺の被害が全国で急増

金融リテラシーは、詐欺から自分を守る力でもあります。警察庁によると、2025年のSNS型投資詐欺の認知件数は全国で9,523件にのぼり、前年から約5割増えました。典型的な手口は、SNSの広告や投稿、動画サイトの概要欄などをきっかけに、著名人や投資の専門家を名乗る人物とやり取りを始め、LINEなど別のアプリのグループチャットに誘導されるというものです。その後、「必ずもうかる」「先生の言うとおりにすれば利益が出る」などと信用させ、投資金や手数料の名目で、何度も振り込みを繰り返させます。被害額が1,000万円を超えるケースも少なくありません。
沖縄でも被害は過去最悪、「必ずもうかる」は危険信号
沖縄県内でも状況は深刻です。県内の2025年の詐欺被害額は32億3,000万円と、過去最悪を記録し、前年から倍増したと報じられています。県内でも、株の投資指南役を名乗る人物にLINEへ誘導され、会社役員が2,000万円を超える被害に遭った事例などが報じられています。覚えておきたい基本の合言葉は、「必ずもうかる」「元本保証で高い利回り」といった言葉を使う相手は、まず疑うことです。将来の収益を確実に約束できる投資は存在しません。また、SNSで知り合った相手から個人のアカウントやグループへ誘導された時点で、一度立ち止まって、家族や身近な人に相談することをおすすめします。
怪しい投資話を見分けるポイントとしては、次のような点が挙げられます。第一に、「今だけ」「あと○名限定」など、判断を急がせる言葉があること。第二に、投資の仕組みを尋ねても、具体的な説明がなく、利益の大きさだけを強調されること。第三に、個人名義の口座への振り込みや、暗号資産での送金を求められること。第四に、出金しようとすると、手数料や税金の名目で追加の入金を求められること。これらのうち一つでも当てはまる場合は、その場で返事をせず、公的な窓口や身近な人に相談してください。金融商品を扱う事業者は、国や自治体への登録・届出が必要なものも多いため、相手の事業者が正規の登録を受けているかを確認することも、有効な防衛策の一つです。
迷ったときの相談先を知っておく
少しでも不安を感じたときは、一人で抱え込まず、公的な相談窓口を活用しましょう。商品やサービスの契約に関するトラブルは、全国共通の「消費者ホットライン(188)」で最寄りの消費生活センターにつながります。詐欺の被害に遭った可能性がある場合や、不審な勧誘を受けた場合は、警察相談専用電話の「#9110」や、最寄りの警察署に相談できます。また、J-FLECでは、特定の金融商品の販売を目的としない、中立的な立場での無料の相談サービスも提供しています。相談先を事前に知っておくことが、いざというときの冷静な判断につながります。
学びの場を活用して、家族でお金の知識を高める
無料セミナーや出前授業を気軽に活用する
金融リテラシーを高める機会は、探してみると意外と身近にあります。J-FLECや県内の金融機関、行政などは、無料のセミナーや出前授業、オンライン講座を開催しており、学生向けから社会人向けまで、さまざまなテーマが用意されています。Pocket Fundingにおいても、毎月10日に無料オンラインセミナーを開催しております。「投資をするつもりはないけれど、基本だけは知っておきたい」という段階でも、気軽に参加できるものが多くあります。秋の学びの一環として、まずは一つ、関心のあるテーマの講座をのぞいてみることから始めてみてはいかがでしょうか。
「お金の話」を家族や職場の日常にする

もう一つ大切なのが、お金の話を特別なものにせず、家族や職場の日常の会話に取り入れることです。子どもにお小遣いの使い方を考えさせたり、家族で家計の見直しをしたり、怪しい勧誘の話題をニュースをきっかけに共有したりといった小さな積み重ねが、家庭全体の金融リテラシーを底上げします。特に、詐欺の被害は、一人で判断してしまった結果として起こるケースが多いため、「相談しやすい雰囲気」を日頃から作っておくことが、何よりの予防策になります。学びの秋を、家族みんなでお金の知識をアップデートする機会にしてみてはいかがでしょうか。
※本コラムは、公表されている調査・統計をもとに、金融リテラシーや投資に関する一般的な情報を紹介するものであり、特定の金融商品・投資商品への投資勧誘や、将来の利益・利回りを保証するものではありません。投資には価格変動リスク・信用リスク等が伴い、元本を割り込む可能性があります。貸付型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)を含むいかなる投資も、元本や分配を保証するものではありません。投資に関する最終的なご判断は、リスクを十分にご理解のうえ、ご自身の責任において行っていただきますようお願いいたします。本コラムの内容によって生じたいかなる損害についても、当社は責任を負いません。
参考資料(URL)
• 金融経済教育推進機構(J-FLEC)「金融リテラシー調査(2025年)のポイント」:https://www.j-flec.go.jp/wpimages/uploads/25lite_point.pdf
• 金融経済教育推進機構(J-FLEC)「金融リテラシー調査2025年」の結果:https://www.j-flec.go.jp/wpimages/uploads/25literacy.pdf
• 日本総合研究所「金融リテラシー調査(2025年)から再認識される金融経済教育の重要性」:https://www.jri.co.jp/report/research/detail/16606/
• 消費者委員会資料「金融経済教育推進機構(J-FLEC)の活動状況」(2026年7月24日):https://www.cao.go.jp/consumer/iinkai/2026/496/doc/20260724_shiryou1-4.pdf
• 琉球新報「沖縄で『金融教育受けた』 認識の割合は全国何位? 前回20位から浮上」(有料会員限定記事):https://ryukyushimpo.jp/economics/entry-5233673.html
• 沖縄タイムス「金融教育『受けた』全国3位 25年金融リテラシー調査 正答率 最下位から脱却」(有料会員限定記事):https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1851589
• 金融広報中央委員会「金融リテラシー調査(2022年)のポイント」:https://www.shiruporuto.jp/education/data/container/literacy_chosa/2022/pdf/22lite_point.pdf
• OTV「『金融リテラシー調査』からみえる県民性とこれからの取り組み」:https://www.otv.co.jp/okitive/article/32017/
• 警察庁「SNS型投資詐欺」:https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/case/sns-romance/investment/
• 警察庁「特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等(令和7年確定値)」の解説記事:https://www.sp-network.co.jp/column-report/column/kiki-topics/20260601.html
• 沖縄タイムス「特殊詐欺」記事一覧(沖縄の詐欺被害32億3千万円 2025年は過去最悪):https://www.okinawatimes.co.jp/subcategory/%E7%89%B9%E6%AE%8A%E8%A9%90%E6%AC%BA