34年振りの円安!

最終更新日:投稿日:金融・経済

米国のインフレ、想定を超える

NEW円安

34年振り円安は日米の金利差

円が対ドルで1990年6月以来34年振りの円安・ドル高、1ドル153円台になったと、大々的に報じられましたが(日本時間4月11日、NY市場の10日)、資金運用している皆さんにとってどういう意味があるのでしょうか。米国に投資している方にとっては大きな影響があります。新NISAでS&P500の投資信託を購入した方は多いのではないでしょうか。実は、本年初2024年1月1日には1ドル=140円92銭で取引が始まっているので、約12円円安が進んだことになります。つまり、S&P500の投資信託は、年初来円安効果だけで約7.8%値上がりしたのです。実際S&P500指数はドルベースで年初来約8.2%上昇しており(4月10日現在)、合わせると16%近いリターン、100万円なら116万円程になったのです。米国へ投資している皆さんはホクホクだと思います。もっと円安になれば良いのにと思っているはずです。この対ドル円は、この先どうなるのでしょうか。はっきり言ってプロ中のプロにも誰にも分からないのです。プロ中のプロが相当先を様々な要因を考え、今の対ドル円の価格が決まっているのですから。 

10日に大きく円安に振れたのは、米国の消費者物価指数(CPI)3月の発表があり、その上昇率が市場予想を上回り、米連邦準備理事会(FRB)が早期に利下げに動くのは難しいという観測が強まったからです。つまり日米の金利差が徐々に縮小して(米国のインフレ率が下がる傾向)、本来あるべき為替水準の円高へ向かう予想が多かったのですが、想定が外れ米国の高いインフレ率が暫く続くという見方に変わってきたのです。 



2022年から新型コロナの鎮静化により世界的に経済活動が活発になりインフレ(物価上昇)率が上がりました。欧米では中央銀行が金利の引上げに動き、つまり経済活動を弱めインフレ抑制しようとしたのです。FRBはこのインフレ率と失業率を重視し政策金利(FF金利)を上下動させます。2023年に入るとこのFF金利をいつ下げるかが注目の的になっていましたが、その重要な指標となる消費者物価指数(CPI)と失業率が予想よりCPIは高く失業率は低い、つまり米国経済が予想より活発(インフレになる)状態が続いているのです。 

ちょっとややこしい話になりましたが、衝撃的な話をします。34年振りの対ドル円安となりましたが、過去には円の対ドル円高最高値はどのくらいだったか知っていますか。今から13年程前の2011年10月に75円30銭という過去最高値を付けています。1995年にも79.7円を付けています。もし、円が対ドルで75円になれば、S&P500の投資信託は為替だけで半値になってしまうのです。私は長年金融市場に携わってきましたが、この円が70円台になった時に、プロの投資家のかなりの方は円が100円を超えて安くなることはこの先もうないと言っていたのです。それが、今は150円を超えています。つまり、もう80円を超える円高はないと誰が言えるのでしょうか。 

もう少し詳しく円安要因について以下、書いておきます。 

円安要因

貿易収支の赤字化

日本は、1980年代から貿易収支が大幅黒字となり1985年プラザ合意以降急激に円高が進んだため、米国からの圧力もあり内需拡大や輸出企業は製造工場を米国へ移転し製造業の輸出を減らしてきた歴史がある。本来、円安が大きくなると自動車や家電など日本の輸出製造業は輸出で儲かるため輸出にドライブがかかるはずだが、製造拠点を海外に移しており輸出にドライブが掛からず円買いに結びつきにくい現状となった。 

また、戦争等の地政学的なリスクで資源価格等の上昇による輸入額の大幅上昇による輸入企業のドル買いがあり、最近は貿易収支の赤字が逓増し大きな円安要因となったのである。 

金利差拡大による円キャリー取引

米国金利が高くなり日本の金利は低いままなので、日米の金利差が拡大して、投資家が高い金利を求めドル資金需要が増えたのである。更に、低い金利の日本で円を借りて、円売りドル買いで高い金利の米国で運用する円キャリー取引が高水準で続いているのである。 

 米国の金利が想定より下がらないのは、消費が落ち込まずインフレ率が想定より高い水準を維持していること、及び失業率の低さと就業者数が想定より高水準で維持されているためである。 

 米国の金融政策を司るFRB(連邦準備制度理事会)は、インフレ率と失業率を最も重視して金利(フェデラルファンド金利)での調整を行っている。 

米国政府の米国投資誘致施策

 日本の輸出企業は、米国での投資を考え北米での高水準の収入収益を円転しないでドルのまま保持する傾向にある。 

 また、米国政府は国内の経済活性化のため、国内での投資企業を優遇する保護主義的な政策により、日本企業が米国投資が増加することを想定しドル買い又はドル保持の傾向にある。